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米国デラウェア州法に基づいて設立されたリミテッド・パートナーシップ(LPS)は日本の租税法上の法人に該当するとした最高裁判決

2015/12/01

はじめに

平成27年7月17日、最高裁は、米国デラウェア州法に基づいて設立されたリミテッド・パートナーシップ(LPS)は、日本の租税法上の法人に該当すると判決を下しました。

今回はその判断基準を紹介いたします。


1. 概要

判決の対象となった事案の概要は以下のとおりとなります。
(1) 複数の個人(以下「本件出資者」という)が、デラウェア州改正統一リミテッド・パートナーシップ法(以下「州LPS法」という)に基づいてパートナーシップ契約を締結し、リミテッド・パートナーシップ(以下「本件LPS」という)を設立した。
(2) 本件LPSは、米国所在の中古集合住宅を購入し賃貸事業(以下「本件不動産賃貸事業」という)を行っていた。
(3) 本件出資者は、本件不動産賃貸事業の建物に係る減価償却費を必要経費として計上することなどにより不動産所得の金額の計算上生じた損失の金額を他の所得の金額から控除できると主張。
(4) 所轄税務署長は、本件不動産賃貸事業により生じた所得が不動産所得に該当せず、他の所得と損益通算できないと主張。

2. 争点
本件LPSが行う本件不動産賃貸事業により生じた所得が、本件LPS又は本件出資者のいずれに帰属するかが争われました。

3. 判断基準
最高裁は外国法に基づいて設立された組織体の行う事業により生じた所得の帰属について、当該組織体が日本の租税法上の法人に該当するか否かで判断することとし、その判断基準について以下のように示しています。(抜粋)

『外国法に基づいて設立された組織体が所得税法2条1項7号等に定める外国法人に該当するか否かを判断するに当たっては、まず、より客観的かつ一義的な判定が可能である観点として、
(1) 当該組織体に係る設立根拠法令の規定の文言や法制の仕組みから、当該組織体が当該外国の法令において日本法上の法人に相当する法的地位を付与されていること又は付与されていないことが疑義のない程度に明白であるか否かを検討することとなり、これができない場合には、
次に、(2)当該組織体が権利義務の帰属主体であると認められるか否かを検討して判断すべきものであり、具体的には、当該組織体の設立根拠法令の規定の内容や趣旨等から、当該組織体が自ら法律行為の当事者となることができ、かつ、その法律効果が当該組織体に帰属すると認められるか否かという点を検討することとなるものと解される。』

すなわち、(1)当該組織体が日本法上の法人に相当する法的地位を付与されていること又は付与されていないことが疑義のない程度に明白であるか否かという1つ目の基準と、これで判断できないときは(2)当該組織体が権利義務の帰属主体であると認められるか否かという2つ目の基準で、法人該当性を判断することとしています。

4. 最高裁判決の結論
最高裁においては、上記3.(1)と(2)の判断基準をあてはめて本件LPSが所得税法2条1項7号等に定める外国法人に該当するか否かを次のように結論づけています。

(1) 本件LPSは州LPS法によって「separate legal entity」となると定められているが、そのことをもって、本件LPSに日本法上の法人に相当する法的地位が付与されているか否かを疑義のない程度に明白であるとすることは困難である。
(2) そこで、本件LPSが法人該当性の実質的根拠となる権利義務の帰属主体とされているか否かについて検討するに、州LPS法は、リミテッド・パートナーシップにつき、営利目的か否かを問わず、一定の例外を除き、いかなる合法的な事業、目的又は活動をも実施することができる旨を定めるとともに同法若しくはその他の法律又は当該リミテッド・パートナーシップのパートナーシップ契約により付与された全ての権限及び特権並びにこれらに付随するあらゆる権限を保有し、それを行使することができる旨を定めています。

このような州LPS法の定め等に鑑みると、本件LPSは、自ら法律行為の当事者となることができ、かつ、その法律効果が本件LPSに帰属するものということができるから、権利義務の帰属主体であると認められる。


以上からすると、本件LPSは権利義務の帰属主体と認められ、所得税法2条1項7号等に定める外国法人に該当し、本件不動産賃貸事業により生じた所得は本件LPSに帰属するものと認められる。
従って、本件出資者は、本件不動産賃貸事業による所得の金額の計算上生じた損失の金額を各自の所得の金額から控除することはできないというべきである。

今後日本における投資家が、米国デラウェア州法に基づいて設立されたLPSを用いて投資をする場合、日本の税制上は「法人」への投資を前提として様々な税務上の課題を検討していく必要があります。


以上

2015年12月1日